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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第117段:ミス・アメリカの一病息災  

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ミス・アメリカ1999のNicole Johnsonさんは19歳で発症したΙ型糖尿病でした。
ミス・アメリカは毎年何らかのテーマを持って行動しますが、今年の彼女仕事はもちろん糖尿病の啓蒙です。
T型糖尿病というのは若年者に突然起こる糖尿病で、インスリン注射をしながらの生活コントロールが絶対に必要な疾患です。
(日本で多い糖尿病はU型糖尿病といわれ遺伝性があり、運動不足と食べ過ぎでのカロリー摂取過多などが原因といわれています。)

彼女は「糖尿病になったおかげで、生活習慣を規則正しくするようになり、ミス・アメリカになれた。」と話されていたようです。

ミス・アメリカになる2年前から持続皮下インスリン注入療法(CSII)という治療法で、注射針を常に刺したままで生活しながらインスリンというホルモンを体内に入れつづける方法を実行されていました。

さすがに水着コンテストのときには、体に悪いことを承知でこの針と装置をはずして出場、1時間だけインスリンが切れて130mg/dlも血糖値が上昇したようです。
(普通の人は食事をしても1時間で130も上昇することはありません。インスリンというホルモンを体内で作ることができない患者さんだからでした。)

時差のあるアメリカ国内で多忙なスケジュールをこなしながら血糖値を厳格にするコントロールできる能力は大変なものです。
順天堂大学医学部・内科学教授・河盛隆造先生のレポートを読んで知りました。
あなたにも紹介しておきます。

ここまで書いて思い出しました。

オリンピックでのアメリカ選手団の中の喘息の患者さんの割合はアメリカ国民の喘息の有病率(病気にかかっている人の割合)と一致していて、金メダルを獲得した選手の中のだけでも喘息の有病率はアメリカ国民と同一であったというレポートを思い出しました。
(ロサンゼルス・オリンピックの時のデータでした。その後このようなレポートを目にしていません。)

一病息災という言葉、昔は存在しない言葉でしたが現在は辞書にも載っている言葉となりました。
(新明解国語辞典第四版、無病で健康に自信を持ちすぎる人よりも、一病の人のほうが、からだに気をつけるので、かえって長生きする、というたとえ)
さすがに多病息災という言葉はありませんが、そのうち辞書に出てくるかもしれませんよ。
(実際に使っている人がいます。)

自分の病気を上手にコントロールすることで、健康な人よりも充実した生活を送る人たちの努力には頭が下がります。

日本のプロ野球でも活躍し、メージャーリーグでも活躍したガリクソンという投手も糖尿病でインスリン注射を打ちながらプレイしていました。
ガリクソン投手は「パーティーでみんなが楽しそうに飲んだり食べたりする光景を見ることが楽しい自分は別に食べなくてもいいのです」と話されていたようです。

病気と診断され「すべてを失ったと」勘違いしているのはとんでもない誤りです。病気と上手に付き合えば充実した生活が待っているのです。
前向きに生きましょう。

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