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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第274段:禁煙推進に新アプローチ(薬とタバコの飲み始め)  

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「先生、この薬を飲みだしたら一生飲み続けないといけないのでしょう?薬漬けになるみたいで嫌です!」と患者さん、「あぁ、あなたもそう考えますか?生活習慣病にかかわるお薬の時には、あなたのような治療に対するイメージを持っている人が多いので、あなた以外の多くの方からも同じような感想を聞いていますよ」と答える私。長く飲み続ける薬を開始するときには飲まされるほうの患者さんは不安でなりません。この先何年も通院しながら毎日薬を飲まされるのかと思うと、大変な負担を強いられることになりますね。

 薬を長く飲むために起こるかもしれない副作用も心配でしょう。決して安くない医療費がかかり続けることも心配の重大な点だと思います。出来るだけ薬を飲まないで頑張ってみようと考えられた患者さんは「先生!もう1回!もう1回だけ、塩分気をつけて甘いもの我慢して、運動して、体重減らして頑張るから、薬は勘弁して!」とお願いされます。「じゃあ、それを何ヶ月やって効果の判定をしましょうか?」と追い詰めてしまう私。それっきり受診は途絶えてしまう方、頑張れないと納得して薬を飲み始める方、約束の数ヵ月後に目標を達成できなくて仕方なく薬物療法に入られる方など様々です。

 お薬、怖いですか?近視や遠視、乱視やいわゆる老眼などで視力の落ちた人は眼鏡やコンタクトレンズを使用していますが、薬も同じように考えていてだけませんか?難聴の方の補聴器も同じ使い方ですね。

眼鏡や補聴器は体の外側に付けて体の不自由さや老化の状態を改善する道具、飲む薬は体の内側の様々な臓器にいろいろな働きを持つ道具を取り付けさせると考えたらどうでしょうか?

毎日薬を飲むと言う行為はその装置が外れやすいからと考えていただきたいのです。「一回飲んだら後の世話が不要な都合のいい薬はないですか?」と聞かれる方が多いのも事実です。

 ここまでの話の薬をタバコに置き換えてみるとどうでしょう?タバコを始めるときには薬ほど敷居は高くなかったですよね。費用のこともあまり心配しませんでした。何度も密かにちょっとだけの禁煙に挑戦しましたか?まだ吸っていますか?一回だけとか、ちょっとだけという言葉で始めて、いつの間にかニコチン中毒になってしまいましたねえ。

益田市の実施している「健康ますだ21」の取り組みも4年目を迎えました。自治会ごとに取り組んだ3年間の課題は「栄養・食生活と歯科保健部会」、「たばこと酒部会」、「運動とストレス部会」でしたが、今年からはそれぞれの自治会は前の3年間とは別のテーマに取り組むことになり再出発です。タバコと酒の部会も新たな地区で再出発となりました。「習慣になりにくい薬とすぐに中毒になりやめられないタバコ」というような今までとは異なるアプローチで禁煙推進をしてみたいと考えています。実際に地域の活動に参加してみると、タバコの害の話は良く知っているから聞きたくない(だから活動に参加しない)、喫煙できる場所が減り始めて迷惑している、タバコを吸う人にも権利があるなどと様々な意見を頂戴しており、それぞれに回答をお返しする予定です。

中毒や副作用の多いタバコには比較的気楽に踏み込まれる方も、安全なお薬にはなぜか踏み込めない。そんな矛盾を感じながらこれからもタバコ問題に取り組みます。

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