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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第301段:青野山仰ぎ7時間散歩  

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「ちょっと、歩いて出かけます」と言葉を残して家を出ました。
やわらかな非在の中を気持ちの良い風に吹かれながら歩き始めました。
しばらくして高津川の堤防の上に出て、上流に向かって進みました。

ときには並走する国道9号を歩いたり、のんびりと川や山の写真を撮ったりしながら、3時間ほど経過して日原の町に着きました。
ベンチに座って靴を脱ぎ、足を見て「まだ歩けるな」ち確信してまた歩き出しました。

今から40年以上も前の話ですが、元気だったころの祖父が「自分の祖父は津和野橋の亀井の殿様のところに正月にはあいさつに上がっていたのだよ」と話してくれたことがありました。

江戸時代の話で、今の川沿いの道ではなく山越えの道だったと思いますが、馬に乗ってか、歩いてか、30キロ以上の工程であったと想像します。
祖父の話を聞いてから、一度は津和野まで歩いてみようと思いましたが、その日まで実現しませんでした。

日原の駅を過ぎて高津川に沿って歩き始めると目の前に津和野の町のそばにそびえる青野山が見えてきました。
あの山のふもとまで歩くのだなあと考えながら足を進めていました。

歩いていると色々な事が頭の中に浮かんできます。
青野山を撮りながら頭に浮かんだのは母校の益田市立横田中学校の校歌でした。
「南の空に、青野輝き高津の川の瀬音は澄みて・・・」

中学校の辺りからは青野山が見えるのですが、津和野に向かって歩き始めるとすぐに見えなくなり、日原まで10キロ余りを歩かないと、再びその姿を見る事はできません。
山を見ながら久しぶりに校歌を思い出していました。

いつもは車で走らない対岸の道を歩いていると、足の裏のまめも成長してきました。
ここまできたらやめるわけにはいかないと考えているうちに、対岸の道路も途切れ橋を渡って国道に戻ると広い歩道もほとんどなく、車とのすれ違いに気を使います。
車のときには気にもとめていませんでしたが、この日は歩行者の気持ちが良く理解できました。
「こわい!」

車の多い道になると道端のごみが目につきます。
一番多いのがたばこの吸い殻、次いで清涼飲料水やコーヒーなどのペットボトルや空き缶、そしてたばこのパッケージの箱、本当にあきれるほど落ちています。
「道路をごみ箱にするな」
という言葉を思い出しました。

津和野に行くには少し遠回りになるけど、狭くて怖そうな国道の青野山トンネルはやめて津和野川沿いの旧道を歩くことにしました。
棚田や茶畑を見ながら歩いているうちに津和野の町に到着。

町の中からもう一度、青野山を仰ぎ見てその日の7時間余りの散歩は修了。
JR山口線に乗って石見横田まで30分ほどで帰ってしまいました。

いずれ復路を、と考えています。

『いわみ談話室』より

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