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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第100段:アトピービジネスと悪魔の薬の伝説  

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金沢大学医学部皮膚科、教授、竹原和彦先生の論文をPHYSICIANS' THERAPY MANUAL(PTM VOL10,7(4)APR、1999)から抜粋して紹介しましょう。

アトピービジネスの定義は「アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険診療外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追及する経済活動」とされました。
民間療法などというあいまいな「お年寄りの知恵的なもの」の善意的なものよりも、営利追求の企業活動の意味合いを強くする意味でこう名づけられたようです。

1970年代に医療機関以外の一般薬局で一般薬としてもストロング・クラスのステロイド外用剤(副腎皮質ホルモンの塗り薬)などが売られ化粧かぶれや皮膚炎に乱用され副作用の報告が始まったようです。

1980年代になると副作用の発生した患者さんが訴訟を起こすなどしてマスメディアで取り上げられ、残念なことに副作用が誇張され広まりました。
「自分に副作用が起こった薬はこの病気(アトピー性皮膚炎)に使用することは誤りであるから、ステロイド外用剤の使用は一切禁止すべきである」という論理の著しい飛躍があります。
(自分の家がタバコの火の不始末で焼けたから、タバコを製造・販売することを禁止しようというような理論です。)

1990年代に入りアトピービジネスは隆盛を極め、ついに患者団体が厚生省にステロイド外用薬使用禁止措置の申し入れがあるほどになりました。
一部の医師にも脱ステロイド療法を提唱するものが現れ混乱に拍車をかけしまったようです。

 患者さんのステロイドに対する不安は
  1.中止によるリバウンド現象が起こる
  2.副腎の萎縮が生じる
  3.全身的な副作用が生じる
  4.ステロイド外用剤に対する治療抵抗性の獲得
  5.依存症を生じる
  6.催奇形性がある
  7.色素沈着がある
 などですが、いずれも誤解でそのような事実は外用剤の使用ではほとんど起きていません。

詳しくは書きませんが、色が黒くなるなどということは、まずありえません。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)の副作用には「色素脱失」という項目があり長期に使えば患部が色が白くなるほどです。
アトピー性皮膚炎の皮膚の炎症後の色素沈着を薬の副作用と誤認しているに過ぎません。
(治って行く過程で正常に戻ります。)

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