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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第120段:たまには診察室で話しましょう  

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高血圧症や高コレステロール血症で通院しておられる方、いつもと同じ薬なのだから診察なんか必要ないと考えていませんか?

一般には健康保険を使用しての診療ですから、医師の診察の後、処方される薬は2週間分が基本です。
しかし、特定の疾患や状態で指定された薬品については30日分の処方が認められています。中には60日、90日と長期にわたり処方が可能な場合もありますが、その指定はすべて厚生大臣がしています。

このため、健康保険制度の枠内では意外と厳しい制約があり、実際に診療をしている医師の自由裁量は意外に少ないのです。
(ただしすべての診療を健康保険を使わない自由診療なら話は別ですが、金額は相当高くなります。)

国民から保険料を集め最低限の医療を保証するのが健康保険のシステムですから厳しい制限があって当たり前なのです。
(このあたりを正しく理解していない医師や医療技術者も多いのですが・・・・)

別に診察を受けなくても、医師と健康問題を話し合わなくても同じ薬なら効果は同じと考えるのは残念ながら誤りです。
「ほとんど健康」、「体調の異常を感じない」と判断しても、2週間に1度とか、1ヶ月に1度は待合室で診察を受ける前に自分の体のことを考えてみる時間を作るためだと考えてみてはどうでしょうか?

仕事に追われて体調を崩された方が「そういえば薬だけもらって診察を受けていなかったですね」とか「体のこととなんか考えたこともなく、薬だけ飲んでいれば十分と信じきっていた、でもその薬も忘れがちでした」などと反省の弁をお聞きすることがあります。

待合室で診察を待つ間に体のことを考えたり、診察室で医師と話すということは、もう一度自分の体のことを本気で考えるチャンスなのだと考えてください。
時間がないので早くしてくれと騒がれる患者さんが多いのですが、診察室での時間は自分の体を医師と一緒に点検する時間です。
きちんと診察を受け生活のアドバイスを受けましょう。

9月に受診される喘息の患者さんには10月が喘息発作の可能性の高いことを再認識していただいています。
無症状の時期に無防備になっていて、症状が出てから受診されるとその時の苦しさを乗り越えるための治療の話は聞けますが、そのような状態にならないようにする方法を聞く余裕がありません。
気分にゆとりがないからです。
「転ばぬ先の杖」となるのも無症状の時の診察の効果です。

糖尿病などは季節の食べ物や地域のイベントでの食べ過ぎ飲みすぎなどで失敗する事態が多いのです。
失敗してから頭をかきながら受診するより、事前に注意をしておくことで自然にブレーキが掛かっています。

経験上の感触ですが、薬だけで顔を見せてくださらない患者さんよりも、薬の飲み方は雑で忘れることが多くても、診察室に定期的に顔を出し医師や職員と病気のことについて色々と話されている方のほうが病気のコントロールがよいようです。
医師同士の雑談でこの話をすると、うなずかれる先生が多いのも事実です。

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