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第124段:漢方薬の話 その2 |
最近の漢方薬は昔のように煎じて飲むことが少なくなりました。
エキス剤と呼ばれる薬の形態に変えてしまいました。
これは工場の中できちんと温度管理や製造上の管理を行い薬のバラツキをなくしてしまう方法なのです。
漢方薬の成分を調べながらどの包装の漢方薬も同じ効果になるように調整されています。
漢方薬の原料は生薬(しょうやく)と呼ばれその有効成分は植物由来のものでは同じ苗や種からの生薬でも採取の時期や肥料の具合、日照時間などで大きく違います。
喘息の治療のなどのときに使われる大棗(「たいそう」と読みます。
ナツメの実ですが、私の診療所のそばの庭に植えてあります。)はサイクリックAMPという物質を大量に含んでいることで有名ですが、実が緑色の時期に採取したものと赤くなってからの実では有効成分が桁違いに多く、小鳥が食べに来る時期はこのサイクリックAMPが多くなった赤い実の時期です。
漢方薬の原料を集める人と小鳥との競争があるわけです。ですから山の北側の斜面の草と南側の斜面の草では同じ草でも有効成分が異なるのです。
私も良く使う生薬に附子(ぶし、鳥兜(トリカブト)などともいいますが、猛毒です。)は根に毒の成分が強いものと、花に毒の成分が強いものなどがあり注意が必要です。
(利尿剤や強心剤、鎮痛剤としての効果はすばらしいものがあります。冷え性にも良く効き附子がなければ私の漢方診療は成立しないでしょう。)
このような生薬を安全に使えるように修治(しゅうち)と呼ばれる加工をして品質をそろえたものを一気に煎じて漢方薬の煎じ液を作りその水分をフリーズドドライ工法で顆粒にしたものがエキス剤と呼ばれるものです。
エキス剤は効果が不足しているとか効き目が悪いといわれることもありますが、雑な煎じ方をした場合と比較すると効果が逆転することもあります。
煎じる容器も最近はマイクロコンピューターが搭載されたハイテク煎じ器もあり昔ながらの煎じ方を想像していると正に時代遅れです。