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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第144段:漢方薬の話 その3  

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漢方薬の副作用は第58段でも触れましたが、一般には漢方薬は副作用の少ない薬として認識されているようですね。
しかし意外と副作用の例は多く、健康被害が出現することもまれではありません。
体力の低下した人や虚弱な患者さんに体力のある人の薬や屈強な体質の方に使う薬を飲ませたりするとしばしば副作用が出現します。

さらに長期間飲まなければ効かないという迷信?もあります。
第123段でも紹介していますが、効果の発現は意外と早く2〜3分という超即効性のものもありますが、あまり知られていません。
長く飲み続けなければ効果がないというものでもありません。
漢方診療に詳しい先生とお話をさせていただくと、
「長期間飲んでいると効目が悪くなることがある」といわれる先生もあります。
私もそれを感じることがあり時々薬の内容をを変えたり薬の量を変えて
「体に揺さぶり」を与えています。

実は漢方薬が一番沢山使用されている時代は現在なのです。
昔は薬も買えない貧しい時代で今ほど漢方治療は一般的ではありませんでした。
昭和51年に健康保健で漢方薬が使われるようになってからが漢方ブームになりどんどん花が咲きつづけている状態なのです。
漢方薬は歴史が長く、昔はみな漢方だったと錯覚していませんか?
昔は漢方を含め医療に接することなく命を落としていた方々が大多数だったのです。

朝鮮人参を手に入れるために身売りをする少女の話が存在するのがその証です。
衰弱した老人に人参を含む漢方薬を処方して元気になられるのを見ると、作り話ではないなと感じることがあります。
そんな歴史の中での漢方薬の使用でしたから経験している患者さんの数は極めて少なかったといわざるを得ません。

ですから本当に「副作用の怖さ」や「薬と病気の関係から長期間服用することについての安全性」にはまだ疑問があるのが本当の姿です。

私自身は漢方診療を身近なものとして行っていますが、やはり薬は薬、副作用はいつ起こるか分からないという姿勢です。
診療中に
「漢方薬で治療しますよ。」
とお話すると患者さんの顔が安堵の表情に変わることがしばしばですが、
「漢方薬だから安全と勘違いしないで下さい。」
と必ず釘をさします。
医療行為には危険はつきもの、決して絶対安全はありません。

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