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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第162段:飲む薬が16種類!  

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「私は2人の先生(もちろん別の疾患で)から薬を処方されているけれども、全部で16種類もあるのです。飲むのも大変だけど、薬同士で作用が増強したり、減弱したりしないのですか? 本当にこんなに飲んでも大丈夫ですか?」と質問された看護職の方が「答えに困った」と相談にこられました。

私の答えは「薬剤師がそれぞれの処方に対して専門的な立場から判断していますので、心配は無用でしょう。
次回薬局を訪れたときに確かめてくださいと答えて下さい。」でした。
ずいぶん冷たい答えのようですが、こうしか答えようがありません。

しかし私は続けてこうも説明しました「たった16種類ですか? 私は漢方薬をよく使いますが、漢方薬には数種類多いものは十種類以上の薬草などが混じっていて、一つ一つの薬草には数種類、多いものでは十数種類の以上の有効成分が確認されていますから、有効成分の数だけで比べれば漢方薬のほうが薬品数は多いのですよ。」
相談に来られた看護職の方の驚きが大きくなりました。

日本の厚生省は、基本的に一つの錠剤には1種類の成分だけを含んだ薬を認める方針ですから、漢方薬や一部の例外的な薬を除き、中身は1種類の薬品です。

錠剤やカプセルは薬がある程度の時間をかけて解けるようにしたり、長期間保存できるようにとか、錠剤として固めるための成分とかを混ぜ合わせひとつの薬にしています。
このため薬が多くなると、でんぷんや乳糖というような無害の成分をかなり飲まなくてはなりません。
量もさることながら数も増えますから大変です。
でも漢方薬のような作り方だと、飲むのは1種類に見えますが実は数多くの薬品や自然の化合物が含まれているのです。

たとえば風邪のときに比較的よく使用される葛根湯(かっこんとう)という薬では葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、桂枝(ケイシ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)という7つの生薬(ショウヤク)と呼ばれる漢方薬の原料の草や木の実、根や茎などを加工した後煎じるわけですが、この中の葛根の主要成分ではdaidzein, daidzin, puerarin, genistein, formononetin, puerarol, kakkonein, soyasapogenol A, sayasapogenol B, kudzusapogenol A, kuzdzusapogenol B, kudzzusapogenol C, kudzusaponin A1, kudzusaponin B1, kudzusaponin C1, sophoradiol, D-mannitol, miroestrol, succinic acid, allantoin など20種類が主要成分として考えられています。このような成分が7種類の薬草で混ざり合っていますから、100種類以上の成分を漢方薬では飲んでいるのですね。

普通の錠剤やカプセルがいかに少ない種類の薬品で体を治しているかが良くわかると思います。
しかし漢方薬ではこれだけのものを飲ませても対した副作用もなく病気を治すことが出来るのですからこれまた凄いことです。
漢方薬は自然治癒力を援助する効果もありますから、薬の力も凄いけど人間の力も凄いなと感じませんか?

だから錠剤やカプセルが16種類といわれても私は別に驚きません。
(でも、飲むほうの身になるとやはり多いと感じますよね。)
薬が多いなと感じるときには、医師や薬剤師に少し多すぎると注文をつけても良いですよ。
でも減らすことができない薬が多いのも事実ですが、文句をつけると怒られるとか、怖い、お互いの関係が気まずくなるので我慢するというお考えの方もありますが、結局損するのはあなた自身です。

直接、医師や薬剤師にはいえないけれど他の職員なら何とかなりそうだとかいろいろ手立てがあるようです。
「薬が多い」と言ったら医師が怒り出すのは医師の方にも責任があることを認めますが。
けんかを売るような口調で文句を言われると私でも怒ります。
そのあたりの会話を上手に成立させてください。

「それにしても、やっぱり16種類は多いなあ・・・・・」
「沢山薬を出して、患者さんを困らせているのは私かな? そう言えば怒ったこともあるなあ・・・・・」

反省、反省、反省・・・・

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