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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第179段:視点  

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医師に対しての戒めの言葉の中に「病気を診ず、病人を診よ」というのがあります。

「木を見て森を見ず」という言葉と一致しています。

私自身もそれでよいと考えていました。
ところが保健婦さんたちと話をしていると彼女たちはもっと違った視点から患者さんを診ているのです。
「家庭とか地域の中からの視点で見ていると病人に対しての治療や指導が生きていない」と映ることがあると話してくれました。
人間は家庭生活や社会生活の上に存在していますので、病気を診ずに病人を診ることに熱心だった私にはショックでした。
「家庭を診る」、「地域を診る」こんなトレーニングはほとんど受けた覚えがありませんでした。

「先生たちの治療や指導はあの家庭では受け入れることができませんよ」とか
「あの地域にそのような指導では患者さんがよくなる方法はありません」などといわれると
「えっ!どうすりゃいいの?」という感じです。

いわれてみればその通り、思い当たる節がありました。

医学教育特に医師の教育は専門医として技術や能力を磨くことに中心が移っているからではないでしょうか?
欧米ではその弊害をなくすために一般医を厚遇しすぎた傾向もあり、いま再びその流れが変わろうとしています。
日本は相変わらずの専門志向で進んでいるようです。

もっとも100年以上前のイギリスの医学雑誌には「最近の医学は細分化してしまって理解ができない」というような話が載っているようですから今だけが混乱しているのではないようです。

医師の視点も大きな病院に勤務しているときと開業してからは随分と替わるようです。
看護職や他の職種も同じで同じ医療機関といっても病気や病人家族や地域を診る診方が随分違うのです。

主治医が複数いたり様々な立場の人とお付き合いすることで自分の視点を変えてみることは大切なことだと思います。
治療するだけが医師の仕事ではないようですね。
(私の場合、視点を変えに出かけ過ぎていますか?)

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