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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第186段:2人に1人は不眠症!?  

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快食、快便、快眠などと様々な快適な生活の指標を考えつかれていますが、睡眠がすっきりすると気持ちがよくなるという考え方は多くの方が持っているようですね。
高齢者の不眠の調査結果を示しますので、不眠が自分ひとりだけのものでないことを確認してくだされば幸いに思います。

 1976年にKarcanらが1967名の60歳以上の男女を調査したら
       男性で39.1%、女性で54.7%が不眠であることがわかりました。
 1979年のBixlerらの51歳以上の1006名の調査では
       約40%が不眠であるとされています。
 1989年の稲見の65歳以上の1564名の在宅老人の調査では
       約25%が不眠とされています。
 1992年の中沢らの70歳以上の在宅老人382名の調査では
       47.3%が不眠とされています。

いずれの調査でも男性よりも女性が多く不眠を訴えています。
そして女性の多くが睡眠薬を悪い薬、飲まないほうが良い薬と位置付けておりそのために不眠症を悪化させているのです。
一般的に日本人は欧米人に比べて睡眠薬に対する不安感が強く、一生やめられない、量がドンドン増えつづける、ボケてしまうなどという誤ったイメージから、薬を処方してもらっても飲まなかったり勝手に減量したり、中止している人が多いようです。

私の毎日の診療は睡眠薬の誤解を解くこと、副腎皮質ホルモンの正しい使い方の説明、血圧の薬や高脂血症の薬の必要性・・・・・で振り回され診断や治療よりもそのほうが時間がかかってしまいます。

睡眠薬や安定剤(この日本語がよくない。トランキライザーと英語では呼び、穏やかにさせる薬、平穏にする薬、平静にする薬であり、安定という日本語に対する英語はスタビライザーですから訳が違っています。)に関しての偏見は医師や薬剤師にも多く、それが患者さんの偏見を助長しています。
(このあたりは私を含めて再度反省すべきですが)

不眠症の治療で必要なことは患者さんに毎日同じ時間に寝付けるように睡眠薬を積極的に使用して体に寝ている時間と起きている時間のリズムを覚えこませることです。
飛行機での移動などで起こるジェットラグ(時差ぼけ)は完全に新しい土地でのリズムになるまでに約1ヶ月かかります。
ですから滅茶苦茶な睡眠時間になっている人は、最低でも1ヶ月は薬を使用しながら同じ時間に寝なければ治療ができないということです。
1週間飲んで「癖になるから」と睡眠薬を中止していませんか?

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