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第203段:医者は詐欺師か恐喝屋か |
痛くも痒くもないのにこの薬を飲むと心筋梗塞になる確率が下がりますとか、脳出血になる可能性が減りますとか、ワクチンを接種すると肺炎になりにくくなりますとか都合のいい話を医者からずいぶん聞かされていませんか?
薬の副作用の話も出てくるけど、「本当にどのくらいの効果があり」、「どのくらいの危険度があるのか」よくはわかりませんよね。
死亡率が1.9倍とか死亡が70%阻止できるとか説明されても確かめる方法もないし、「はぁ?、ああそうですか。結局先生の言われる通りにするのがいいんでしょ?」と答えていませんか?
医師には患者さんに理解できるように説明する義務がありますし、患者さんには理解できるまで説明してもらえる権利があります。
手術やガンの治療などで手術をしたい医師、手術をしたくない患者、あるいは口をはさみたがる友人や家族などのさまざまな人の思惑が絡むと、どうしていいのかわからなくなる場合が多いのではないでしょうか?
病院内で検査に追いまくられ、お見舞いの人との対応に終われていて、本当に冷静に考えられるとか理解できるのでしょうか?
私が敢えて「詐欺師か恐喝屋か」と書くのは患者さんが落ち着いて考えられるような環境も作らずに説明している現状を知っているからです。医師から時間を指定されて、落ち着かない場所で病状と今後の展開について説明を受け始めると、いくらリラックスして聞いてくださいといわれてもリラックスできるものではありません。
私自身10年以上前に手術を受ける前に友人の医師から説明を受けましたが、いつもの気楽な友人関係ではなかったことを思い出します。
(まな板の上の鯉でハイ、ハイと同意していました。理解はしていたつもりですが・・・)
だからこそ医師として自分たちは患者さんのほうから見れば、詐欺師や恐喝屋と同じように見えているのではないかと考えてしまうのです。
この手術を受ければ、あるいはこの治療をすれば、よくなりますと言われると、そうかと思い込んでしまう詐欺の商法に似ていませんか?
これをしないと命を落とす可能性がありますとか、何もしなければ非常に危険な状態になりますと、不安感が生じるような話をされたことはありませんか?
恐喝と紙一重とは思いませんか?
医師だから人格者とかってにきめつけていませんか?
医師だって普通の人間ですし間違いを起こすものです。
疑ってかかるほうが良いに決まっています。
全知全能の医師など絶対にいません。
人格だってどこかは必ず歪んでいると考えるほうが自然です。
少なくとも私は医学部に入っても人格教育らしいことをカリキュラム上で学んだ覚えはないような気がしますね。
医師と患者の関係を冷静に考えてみると随分力関係に差がありますね。
その差を感じさせないように説明をしているつもりが、実はパターナリズムとか父権主義といわれる、医師の私が守ってあげる、医師の私に任せれば大丈夫という錯覚を起こさせているのです。
20年以上前の私の学生時代には自分の家族を見る気持ちで患者さんに接しなさいと教育されましたが、これが父権主義です。
現在はインフォームド・コンセントといわれる説明と同意の時代です。
パターナリズムや父権主義は詐欺師や恐喝屋と同じで私に任せなさいといっています。
しかし説明と同意も喋り方をちょっと変えれば詐欺師や恐喝屋と同じになってしまいます。
医師を怒らせると損につながると考えてハイ、ハイと答えてあとでだまされたと言わないですむようにしたいですね。
病状を理解し今後の方針を自分で決めることは簡単なことではありませんが、大切な自分の命ですから騙されないようにしてください。