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第213段:ニュースに対する反応 |
「犬が人に噛み付いてもニュースにならないが、人が犬に噛み付けばニュースになる」
と古くから言われていますが、似たような話が医師の間でささやかれます。
「自分は手術が成功したことがニュースになるような手術は受けたくない」とか
「手術が失敗したことがニュースになるような手術は自分なら是非受けたい。」と変ですか?
珍しいことがニュースの基本ですから、珍しいことは前例がないわけですから不安に感じるものです。
手術が成功したことがニュースになるということは患者さんにとっては希望の光ですが、そのような手術が頻繁に行われていない証拠ですし、手術の安全性が完全に確立されていない可能性もあります。
また始まったばかりの手術ですから長期間にわたっての手術後の経過や後遺症の有無についても検討されていないということです。
新聞やテレビで取り上げられたニュースになるような新しい治療法にはそんな危険性が隠れていることにはほとんどの方が気付いていません。
これで自分が、あるいは家族や親戚、友人が救われると考える方がほとんどでしょう。
私はそうは考えません。
ただし新しい技術や試行に消極的ではありません。
ただ充分な評価に耐えていないということを改めて認識しているだけです。
その一方で失敗した手術や治療法がニュースで流れるとほとんどの方が
「あんな危ない治療はご免こうむりたい」とか
「危険な手術だと報道された手術はいやです。」と話されます。
でもほとんどの場合は成功してうまく行くはずの手術や治療法が、極めてまれな失敗や状況で思いもかけないことが起こったので失敗してニュースになったのですから、次回の治療や手術はほとんどうまく行くはずです。
だから失敗がニュースになるような医療行為は、是非、挑戦していただいたほうがよいと私は考えるのです。
多くの日本人は
「モルモットになるのはいやだ」とか
「実験的な治療や手術はとても耐え切れない」などとの意見を持たれて欧米で行われるような実験的な治療に賛成していただけません。
このため日本ではなかなか先駆的な医療が開発できないのが現状です。
しかし一度でも成功のニュースが流れると、あの治療法を私にも、あの手術を家族にもと希望が殺到してしまいます。
一度成功すれば二目も三度目も成功すると勝手に信じられる方が多く、逆に失敗のニュースを聞くことで、今後の手術は全て失敗するというように錯覚されるのでしょう。
マスメディアで取り扱われた新しい医学情報は私たちも知らないことが多く、その日や翌日に感想や論評を聞かれても何も答えられません。
また勉強してからお答えします。どういうわけか、お答えが用意できた頃には質問者の方はその質問に関する問題の興味がなくなっていることが多いようですが。