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第215段:フードファディズム |
「体によい食べ物」というと健康志向の世の中ですので注目度が相変わらず高いですね。
医食同源、薬膳などといわれると食べ物には薬の効果がありいいものを食べれば健康になると信じておられる方も少なくないようです。
私の診療所の栄養士と話していたら「食べ物で体に悪いものはありませんよ。
食べ物が悪いのではなく、人間がその食べる適切量を守らないからです。」と答えてくれました。
テレビで「たまねぎ」が体によいと話していたので早速それを食べていますという患者さんに、どの有効成分を摂取するのかを聞き有効成分の分析結果とあわせると、なんと「たまねぎ」50kgで期待の有効量になるという結果でした。
毎日50kgも食べられるわけがないのにもかかわらず、本人は少しずつでも食べれば効果が出ると期待しているのです。
わずかな量の有効成分が含まれている事実と、効果がでる量との関係が理解できていないわけです。
このような現象すなわち、食べ物や栄養が、健康や病気に与える影響を過大に信じたり評価したりすることを「フードファディズムfood faddism」といいます。
赤ワインのポリフェノールには抗酸化作用があるから体によいと聞きアルコールが飲めない女性が葡萄ならいいのだろうと解釈して干し葡萄を大量に食べ糖尿病を悪化させて受診されたことがありました。
酢が体によいという迷信は非常に強く酢大豆、酢卵などなど様々な摂取方法がありますが、すべて科学的な根拠には「?」がついています。
その昔、「高血圧の治療で塩分を制限させるために副食の味をピリッとさせるために酢を使うと良いですよ」とか、「酢を使用することで塩分を少なくすることができますよ」と指導したことが結果的に酢は体によいと誤解を生んだのかもしれません。
どの食品にも人によってよい効果と悪い効果がありますし、成分の割合で変わることもあるそうです。
果物はビタミンB群やビタミンCを摂取するにはよい食品の一つですが、最近の果物は糖度が高く、多すぎる糖分がビタミンの効果を上回る悪影響を与えます。
果物の甘味は砂糖の甘味とは異なる果糖が多いので食べ過ぎに注意して下さい。
人間はでんぷんに多く含まれるグルコースという糖分で体が安定して動く動物です。
自然界の果物の中に多い果糖(フルクトースと呼びます。)に依存する動物ではありません。
このためフルクトースの処理は下手でも体調が乱されることがなかったのです。
しかし現代では果物のフルクトースの取り過ぎで体調を崩している場合が少なくありません。
フードファディズムの犠牲者にならないようにお祈り申し上げます。