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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第223段:睡眠の話  

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何度も出てくる睡眠の話もまとめを作りましたのでご紹介します。

気持ちの良い目覚めのために
睡眠に関する誤解から解き放たれて気持ちよく生活しましょう。

1.睡眠時間は人それぞれ日中の眠気で困らなければ大丈夫と考えましょう。
8時間睡眠といわれていますが、医学的な根拠はありません。日本人の睡眠時間は6〜7時間が35%程度で一番多く、8時間以上寝ている人は10%に満たないのが現状です。
5〜6時間の人と7〜8時間がそれぞれ25%程度です。

2.刺激物を避け、眠る前には自分のリラックス法を実行しましょう。
日本茶やコーヒー、紅茶,ココア、コーラなどのソフトドリンク、栄養・健康ドリンク剤、チョコレートなどにはカフェインが含まれています。
カフェインの覚醒作用は、口にしてから4〜5時間も持続しますので注意が必要です。
軽い読書や心地よい好きな音楽、ぬるめの入浴、ストレッチなどが適していますが、刺激が強いと逆に目覚めることもありますので控えめにしましょう。


3.就寝時刻にはこだわりすぎず、眠くなったら床につきましょう。
少しでも長く寝ようと早く床についても、実際に早く寝付くことは難しいのです。
りきんで眠ろうとするのは逆に目覚めさせてしまいます。
眠くなってから床につけばいいと楽に考えましょう。


4.休みの日でも同じ時刻に起きましょう。
早く起きることが早く眠くなる方法です。
朝の太陽の光を受けて14〜16時間経過すると眠気が自然に起こります。
休みの日だからといって朝寝坊すると生活のリズムが崩れます。
土曜日,日曜日、夏休みなどの長期の休暇でも、いつものように早起きをしましょう。


5.光の力を有効に使って、良い睡眠を得ましょう。
朝起きたら太陽の光をあびたほうが人間の体内時計がよく整います。
曇りの日でもその効果は雲を通しての刺激が来ていますのでなるべく早く屋外に出てみましょう。
(睡眠とは関係しませんが、1日に必要なビタミンDを作るために必要な紫外線の量は、顔と手が衣服から出た状態で戸外に15分ほど出ていれば満たされます。日光にあたりすぎて皮膚がんなどの紫外線の障害を受けないようにしましょう。)


6.規則正しい1日3食、運動習慣は効果的です。
朝食の1時間前から胃や腸などの動きが活発になり自然と目が醒めるようになります。
夜食の量が多すぎると朝の目覚めが悪くなります。
空腹で眠れないときには牛乳など消化が良く軽いものを少しだけにしましょう。


7.昼寝をするなら、15時前に20〜30分夕方の昼寝は夜の睡眠に悪影響を与えます。
本来午後に眠くなるのは人間の体のリズムによる自然現象です。
短時間の睡眠でさっと切り上げましょう。
昼間の眠気の時には無理に寝る必要はありませんし、ある程度時間が経過すると自然に眠気は消失します。


8.眠りが浅いと感じたら、積極的に遅寝・早起きをしましょう。
寝床に入っている時間が長いと熟睡感が減ってきます。
睡眠時間を凝縮すると睡眠の質が高まり熟睡感が増してきます。
必要以上に睡眠時間にこだわることを止めましょう。

9.睡眠中の激しいいびき、呼吸の停止、足のピクツキ・むずむず感は要注意。
こんな症状があると昼間の異常な眠気が来ることもあります。
さまざまな病気が隠れている場合もありますので医師に相談しましょう。
睡眠時無呼吸症候群や睡眠時周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群などの可能性があります。


10.充分眠っていても昼間の眠気で困るのなら、専門医に相談しましょう。
日中の眠気の多くは睡眠不足や睡眠の質が低下して、良い睡眠がとれていないことに原因があります。
しかし過眠症という病気が隠れていることもありますので注意が必要です。


11.睡眠薬がわりの寝酒は不眠のもとです。
「睡眠薬より寝酒の方が安全」という意見がありますが、医学的には間違った考え方です。
アルコールでは寝つきはよくなりますが、眠りが浅くなり、トイレが近くなるため、睡眠の質は低下して、目覚めたあともたっぷり眠った感じが得られません。
百薬の長といわれるお酒ですが、睡眠薬がわりとしては万能ではないことを覚えておいてください。


12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全です。
「睡眠薬を使うとぼける」、「癖になってだんだん量を増やさないと効かなくなる」という知識が知られていますが、これらは全て誤りです。
現在、一般的に使われていることの多い睡眠薬(主にベンゾジアゼピン系)は,正しく使えばアルコールよりきわめて安全な薬として知られています。
医師や薬剤師の指示をきちんと守り、気持ちの良い目覚めを手に入れてください。


国際的な睡眠の調査では日本人の不眠の割合は平均よりも若干少ないのですが、医師を受診している人の割合が諸外国に比較して極端に少なく、そのために睡眠薬の使用も少ないことが知られています。
さらにお酒に頼って寝ようとする人が外国に比べて極端に多く、カフェインを減らすことなどの基本的な対策が軽視されていると報告されていました。
睡眠に対する正しい知識をもつことが必要でしょう。

この文書は国立精神・神経センター精神保健研究所/精神生理部長:内山真先生の本を参考にまとめました。

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