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第229段:新しいおもてなし |
2000年12月に益田市でアメリカからのジャズ演奏家を招いてのコンサートが開催さ
れました。
演奏会を主催した「愚LOOP-60s」のメンバーとして経験した楽屋話を紹介しましょう。
ジャズヴォーカルのダイアン・リーヴスさんやピアニスト、ドラマーなどの5人に加えミキサーもアメリカから同行してきた彼らがまず要求したのはホテルの禁煙ルームでした。
部屋にタバコの匂いがするのを喫煙しない彼らは嫌っていたのでした。
食事の場所も禁煙レストランを要求され予定されていたお店や我々は大慌てでした。
結局、予約しておいた店では禁煙席がなく当日は店内を禁煙にするという妥協案で納得してもらいました。
更に、食事は菜食主義だと聞いて再びわれわれを驚かせました。
実際にはコレステロールが高くなりやすい牛肉や豚肉を食べないという言い分で、宗教上の問題であったら妥協はありえないので事実関係が判明し安堵しました。
コンサートが終了して我々と食事になったときミュージシャンから「アルコール類は飲まない、フレッシュオレンジジュースにしてくれ」と注文が来ました。
「コーラは飲まない?」と聞いてみても「飲まない!」と断られる始末で、昔々のジャズに酒とタバコはつきものという概念が崩れていったことを感じました。
思い出してみるとジャズ・トランペット奏者の日野皓正さんも禁煙・禁酒の人でした。
日野さんと益田での講演の後でお話したときに彼は「お茶を飲みながらでも十分はしゃげます。お酒の力なんか借りる必要はありません。」ときっぱり、タバコも吸う必要性を認めないというようなことを話しておられました。
「もちろん昔は酒もタバコもやっていて、ウイスキーの宣伝にも出ていたけどその後止めました。」と楽しそうに話しておられました。
改めて今までのおもてなしを考えてみると、お客さんがお見えになるとき相手の食事の嗜好などを考えることはあっても、健康的な食事のことを考えた準備などしたことがないような気がします。
35歳以上の日本人では10人に1人が糖尿病を否定できない状態といわれ、高血圧も成人では3人に1人は治療が必要といわれる現状では、カロリーの高いものや味の濃いものを出すことは今では失礼に当たるかもしれません。
当たり前と思って出している灰皿はタバコのきらいな人には配慮のないものに映りますし、濃厚な味の料理は確かにおいしいですが、健康を考えるとちょっと考え物です。
アルコールは日本人特有の「お近づきの1杯」や、「ご返杯の習慣」がついつい適量を超えさせてしまいます。
お客様を喜ばせる前に、お客様を不快にさせないことがサービスの一歩と考えます。
ダイアン・リーブスさんの問題で「益田の町の宿泊施設や飲食店の禁煙度は?」と改めて話し合ってみましたが、明快な答えは出てきませんでした。
灰皿が出るのが当たり前の町から快適なおもてなしのできる町になって欲しいと考えます。
2001年1月の山陰中央新報「いわみ談話室」から