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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第230段:花からふるさとを  

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国際化や国際交流はさまざまな言葉で語られ多様な実践が行われていますが、私の所属するロータリークラブの数多い活動の中にGSEと呼ばれるプログラムがあります。

数名の社会人を2国間で交換し、職業や教育、文化を豊かにするような勉強をさせるプログラムで、約1カ月間、相手国の特定地域について研修して回ります。

1965年に始まり、毎年500組以上の交流があり、これまでに32,000人以上が参加。
昨年はイギリスから5名のチームが島根、鳥取、岡山を訪れ、私たちの地区からもイギリスの西南部にチームを派遣しました。

益田地区の研修が4月上旬でしたので、休養日に満開の三隅町の大平桜の下で花見をました。
スケジュールが立て込んでいた彼らにはいい休養で「日本の花を国民が楽しむ姿がすばらしい」との感想もいただきました。

ちょうどその日、手に入れた黄色い水仙をプレゼントしたところ、メンバーの1人が「私の故郷の花は黄色の水仙です。日本の国花を楽しんだ上に、自分の地域のシンボルである黄色の水仙をプレゼントしていただき非常にうれし思います」と答えてくれました。

彼らと別れた後、自分が県の花の「牡丹」や益田市の花の「梅」をプレゼントされたり、飾ってあったときにあのような会話ができるのだろうか、と考えてしまいました。
桜や梅は見に出かけますが、国花や市の花を見たり扱ったりすることがないため、そのような意識はありませんでした。

外国に出かけて現地の人と話をすると「自分がいかに日本のことを知らないかを知らされる」という感想をしばしば耳にします。
外国だけでなく、多くの方が、進学や就職で県外などに出てみるとふるさとのことを意外と知らないことに気付いたとも話しておられます。

高等学校を卒業後、大半の子どもたちがふるさとを後にする石見地方では、18歳までにさまざまなことを教えておいてやりたいものです。

推定の樹齢が660年を超す桜の大木である大平桜や、天然記念物の唐音の蛇岩などの豊かな自然に加え、石見銀山などの遺跡についても、自分の言葉で語れる経験をさせたり、自らが調べてみるプログラムも必要ではないでしょうか。

数年前に益田市教育委員会が発行した小学生向けのガイドブックは良くできており、それを活用し地域を知った子どもも少なくありません。
中学、高校、成人への継続的な事業として展開してこそ、わが町、我が故郷としての知識になるはずです。

さて、今年の花見は日本の国花「山桜」を鑑賞しませんか?
私は色鮮やかで花びらが大きめな散り際の良いソメイヨシノ(染井吉野)よりも、白く可憐な山桜が好きなのですが…。

2001年3月の山陰中央新報「いわみ談話室」から

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