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第232段:転ばぬ先の杖 |
ここ数週間は訪問診療の行き帰りに山の杉の枝を眺めています。
春先のスギ花粉症の偵察です。
ここ数年、スギ花粉症は多くの方々に認知された病気の一つとなりました。
私自身もスギ花粉とヒノキの花粉に過敏性があり春先は涙と鼻汁で辛い季節です。
杉は夏場の気温が高いと翌年の春の花粉が多くなる傾向がありますが、春先に雨が多ければ花粉が多くても症状は軽くなりますし、晴天で風向きが悪ければ花粉は少なくても患者さんは困られます。
最近では眠気が少なく副作用のほとんどない薬が医師からの処方で多く使われるようになりなしたので患者さんも随分楽になられたようです。
さて今年の花粉の状況は?と山あいを車で走ってみると、例年に比べて極端に多いという印象はありません。
勘や経験で医学を論じることは避けなければなりませんが、今年の益田地域の花粉症は例年と比較して極端に多くなりそうではありません。
多分、花粉の飛散開始も平年と1週間以上ずれることはなく2月の中旬から涙や鼻汁が出始める方が多いでしょう。
遅れて症状の出る方にはヒノキの花粉症の可能性が高くなります。
花粉症の治療には症状が起こってからの対症療法もありますが、流行期以前からの治療も存在します。
いわゆる「転ばぬ泣きの杖」あるいは「備えあれば憂いなし」治療です。
花粉症に係らずインフルエンザの予防接種、あるいは生活習慣病などの生活習慣の改善などもこの手の治療の一環です。
残念なことに多くの方が知識はあっても症状が起こるまでは自分とは無縁と考えられているようです。
そして禍に出会って初めて「事前の対策を講じておけば・・・」と悔やまれます。
特に花粉症やインフルエンザは毎年のように繰り返してきますので、そろそろ事前対策が行き渡ってもよさそうな頃だと考えていますが、現実には程遠い状況です。
花粉症では辛い時期は1〜2ヶ月ですが、辛さに耐えかねた患者さんは根本的な治療を求められます。
そこで様々な無症状のときの治療を提案してみますが、9割以上の患者さんが無症状のときの治療を継続していただけません。
ここが「転ばぬ先の杖」作戦のつまずきなのです。
「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」の言葉どおり花粉の飛散時期が過ぎると通院も途切れていつのまにか治療が中断してしまいます。
春先になって頭をかきかき「まだ間に合いますか?」と顔を出されます。
一方「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」患者さんもおられますから、医師の側の対応もそれぞれの患者さんに合わせるのに大変です。
インフルエンザの流行期は桜が咲く頃まで続きます。
一冬に二度インフルエンザに罹患する場合もありますのでまだまだ注意が必要です。
インフルエンザの予防接種は11月が最適ですし、花粉症の事前内服は1月下旬から2月
上旬から開始です。
2003年2月の山陰中央新報「いわみ談話室」より