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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第261段:散歩の効用  

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数年前から健康を目的に散歩をしておられる方が急速に増えてきましたね。
運動不足の方々には手軽な運動として認知されており生活習慣病の予防などでも散歩の効用が宣伝されています。

ところが歩けば歩くだけ健康になるのかと問われると、答えは「いいえ」なのです。

運動療法としての散歩やウォーキングはその目標設定の時点で整形外科医が加わっていなかったことが原因で運動しすぎで起こる様々な骨や関節の障害に対する歯止めがきかなかった経緯があります。

健康ウォークや散歩に関しては多くの関係者から様々な提案があり情報は錯綜しています。私の知る範囲で整理をしてみましょう。

1.
定期的に医師の診療を受けている方は、主治医に運動して良いかどうかを確かめ、許可が出た場合にはその医師の指示を優先させてください。(ここが大切なポイント)

2.
まず歩く時間帯、体にとっては食後1時間ぐらいの時に歩いていただきたいのですが、忙しい方々にはそれを求めることはできません。
そして運動の効果からいえばどの時間帯でもほとんど差はありません。
早朝や夜間でもかまいませんが、暗い時間帯は転倒などの危険のほかに犯罪も絡む可能性がありますので常識的な時間にお願いします。

3.
どのくらいの時間歩くのか?
運動は30分続けるというのは約20分以上運動を続けると皮下脂肪を利用したエネルギー消費が始まり体重を減らす効果が出ることが知られています。
ですから、40分歩くと皮下脂肪を消費する運動が約20分ということですし、25分の運動では皮下脂肪を諸比する運動は5分ほどということになります。
時間がないので5分早く切り上げると皮下脂肪を消費することではいつもの半分ということになりますね。
「10分の運動を朝昼夜の3回では運動の効果はないのか?」と問われれば、「あります。」筋肉運動をしているわけですから運動の刺激は伝わり健康に繋がります。
2回に上がるのに階段を使っただけでも立派な運動です。
ただし体重を減らすことには効果的とはいえません。

4.
運動の強さは、一緒に歩いている人とおしゃべりしながら歩ける程度で十分です。
このおしゃべりしながら歩ける程度というのは科学的に無理にない運動をしている目安であることが証明されています。
そして喋りながら運動できないようなきつい運動をしても健康には運動の効果が現れにくく、逆に過重な運動となり心筋梗塞などを起こす可能性が高まります。
汗が出るような運動はのどの渇きと空腹感を引き起こし、運動後の飲食(アルコールを含む)を呼び起こすので体重減少や健康維持のための運動としては好ましくないでしょう。

5.
「登りの坂道や階段のような負荷のかかる道のほうが良い運動になるのか?」としばしば聞かれますが、運動の強度と同じ考え方です。
健康が目的の運動ですから、オリンピックに出るための運動ではないと肝に銘じてください、平坦な道が一番良いでしょう。
好きな道には歩く順序が多分おありでしょうから、それを優先してください。
ただし足にかかる負担は下り坂のほうがきついので、最初に下り道を選択されると帰りが上りで足の負担は減りますね。
しかし、毎日同じ道より時には逆でもいいですよ。
変化のあるほうが楽しいはずです。

6.
歩くときの靴は散歩用の靴が最適です。
靴底の薄い靴やサンダルは好ましくありません。
ちょっと厚手のソックスをはき靴ずれの予防をしてください。
ほとんどのウォーキングや散歩はアスファルトの上かコンクリートや石畳です。
これらの舗装剤はあまりに硬く骨や関節に障害をもたらします。
その衝撃を吸収するためにも厚い靴底が必要なのです。

7.
「運動は毎日しないと効果がないのか?」健康のための運動は週に3回実行すればよいといわれています。
雨が降ろうが風邪が吹こうが毎日時計のように正確に運動しようとされる方がありますがもっと気楽でいいですよ。
なんでもマニュアル通りきちんとしないと気がすまない行動パターンの人は病気を引き起こしやすいのです。
口をへの字に結んで鬼気迫る顔をしてかなりの速さで運動している人をみると「あんた、病気ですよ」と思わず声を掛けたくなりますね。
健康なんてタバコを吸わず、笑って、楽しく、きれいな空気と美味しい水を飲みながら生活している人が大好きです。
無理しなくても日本は健康寿命世界一ですよ。

東京ビルヂング「カルテの落書き」から

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