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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第279段:目を離せる環境が必要  

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10月21日の午後、益田市内で小学生の交通死亡事故が起きました。
その1時間ほど前に亡くなった子供さんの通っていた学校の校長先生と子どもの事故や傷害について話をしていました。
翌日事故を知り、なんとも残念な思いに沈んだ気持ちになりました。

日本人の死因のトップはガンです。
以下、心疾患、脳血管疾患と続きます。

しかし、ゼロ歳児を除いた小児の死因は1960年から不動の1位を保つのが「不慮の事故」つまり、交通事故や溺水(できすい)、窒息、転倒・転落などです。東京で子どもの事故予防情報センター代表の山中先生の話を聞いたのが10月に入ってからでしたから、なおさら無念の感が強かったのです。

最近20年間に医療機関を受診するような乳幼児の事故の発生率に変化が見られない、先進国の小児の死亡原因と比較して日本の乳幼児の事故による死亡率が高く改善の余地があるなどのお話に、私が学生時代に学んだ知識が今も当てはまり、なんら有効な対策が立てられていないことに驚いてしまいました。

事故にあわなければこれから70年も80年も生活して社会に貢献できたはずの子どもたちです。
少子化時代に大切に育てていた子どもを失った親の気持ちは計り知れません。
「運が悪い」、「親の不注意」とかそんな言葉で片付けてしまってよいのでしょうか。

プールでの事故死や回転ドアにはさまれての死亡事例は報道されますが、死亡に至らなかった怪我や傷害は実態すら分かりません。
まして怪我や傷害に至る前のいわゆるヒヤリ・ハット事例は数限りなく起こっているはずです。
不注意や気の緩みが原因で大人も考え付かないような事故を子どもたちは起こっているはず。

もちろん「注意してね」、「気をつけるのよ」で事故がなくなるわけでもありません。
事故は必ず起こります。

また誰にでも起こり得るものです。
事故を起こしやすい子どもや事故を起こしやすい家庭があるのでしょうか。
そのこと自体がまだ日本では立証されていません。
これはわが国には公的な傷害(事故)調査研究機関がないために原因も対策も考えられていないからなのです。

困ったことに、通常の健康問題での死亡ならば厚生労働省の管轄ですが、事故となると厚生労働省の管轄を外れてきます。
どうもこのあたりに30年以上も実態が変わらない原因がありそうです。

風呂の残り湯やお風呂の準備をしているときに浴槽に転落して死亡する子どもは全国で年間30〜40人は下りません、交通事故は小児の命を失うもっとも大きな原因の一つですが、事故の予防のために本当に有効な手段で子どもを守っているのでしょうか。

子どもが車に乗る時にはチャイルドシートを取り付けているのは当然ですが、その装着や固定が適切になされているかを確認していますか。
後部座席でもきちんとシートベルトを装着していますか。
自転車に乗るときにはヘルメットを使用させていますか。
誤飲や窒息を防ぐための有効な方法はご存知ですか。

「生活のあらゆる場面で『子どもから目を離さないで』ではなく『子どもから目を離してもいい』環境を作る必要がある」と話された山中先生の言葉が心に残りました。

「いわみ談話室」から

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