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第280段:落ちこぼれを作るな |
「荷物がまだ届いていない」
11月14日に日本から船便で出した荷物が、まだ赤道直下のマーシャル諸島共和国に到着していないとの連絡が入ったのは約 2ヶ月を経過した1月12日のことでした。
通常の船便なら1ヶ月程度で到着のはずです。
私の所属する益田西ロータリークラブの同国への海外教育支援事業3年目の出来事でした。
1月14日に日本を仲間とともに3人で出発して16日には現地の教育省で日本の算数の教科書を英訳した本を贈呈する予定でした。
荷物の動きを調べてもらうと12月19日には中継地のアメリカ領のグアム島に陸揚げされていましたが、現地のクリスマス休暇に重なったため税関の業務が停止して輸送も止まっていて、あと2・3週間はかかるという報告に愕然としながら、目録だけの贈呈式にするか見本で持っている教科書を使っての形式的な贈呈式にするかを検討しながら現地に向かいました。
初年度は子供用のコンパスと三角定規を2500組、2年度は教員用の授業で使う大型のコンパスと三角定規、3年度の今回は、今後同国で教科書として採用するかどうかを現地の先生方に検討してもらうための90冊の教科書を送るという事業です。
日本の教育改革の一環で日本国内でも英語で日本の義務教育のカリキュラムを実施することが可能になり、そのために作成された教科書が英語で授業をする国でも使えるのではないかという実験も兼ねての支援事業です。
英訳された教科書ができたことで教員の派遣に加え教材の提供など支援の幅が広がりそうです。
同国は人口6万人足らずの、太平洋の真ん中29の環礁と5つの島の国ですが、島であるがゆえに合計120の小中高等学校があります。
児童生徒数は1万5千人余り、14歳までの子どもが約38%(65歳以上の人口はわずか2.7%)という若い人たち多い国です。
教育の環境はまだ整っておらず、自国の教員の養成もままなりません。
私たちが訪問した小学校では日本の国際協力事業団から派遣された青年海外協力隊の隊員も現地のマーシャル語で授業をしており、高等学校ではフィリピン人の数学の先生が英語で授業をしていました。
マーシャル人の教員には高等学校の数学の授業を担当できる能力のある人がほとんどいないことも理由です。
子どもたちは家に帰ればマーシャル語、学校では科目によって英語で授業を受けることもある。
先生は様々な外国人とちょっと私達にはショッキングな国際的な光景でした。
戸籍がない上に就学年齢も定まっておらず、失業率が33.9%と高率で貧困のために就学できない子もいるなど、発展途上国ならではの様々な問題を知ることができました。
ところが私の目にとまったある小学校のスローガンは「落ちこぼれをつくるな!」でした。
いずこも同じか・・・
ところで、件の教科書は1月27日に「到着」と現地から電子メールが届きほっと一安心。
「いわみ談話室」から