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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第281段:健康情報との付き合い方  

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「毎日、毎日さまざまな健康情報があなたに届いていると思いますけど、毎日どれも実行してくださいね。毎日違う食べ物食べて、いろんな種類の運動をして、しょせん娯楽番組の中の情報だからね、笑いながら楽しまなくちゃ、一つだけ信じて偏ったことをしていると病気になりますよ・・・」と答えます。

実は患者さんから「この前テレビでやってましたが、○○って本当に体にいいのですか?」と質問が来たからです、医師の私は「やれやれ、またか」という思いが頭に浮かんできますが、「あなたの情報は特殊な情報か健康な人の一般論であなたには当てはまらないのです。
立派な先生の研究結果だから間違いないと思いますよ。
でもね、その先生はあなたの顔も見たことないし、あなたの診察もしていない、あなたのことは何も知らないのです。
僕はあなたの主治医で、あなたの体の昔も今の状態も知っていますよ。
医師でもない司会者がテレビの向こうから『あなたも○○で元気になりましょう』と呼びかけたときテレビの前のあなたは司会者と向き合っている錯覚に陥っていますが、あなたの様子を見て語りかけてはいませんが、それが分かっていますか?だまされちゃだめですよ」などと私は答えません。

以前は、真剣にテレビの内容を解説しても「はあ?はい、はい」などと私の話を理解したような顔をして引き下がられますが、「テレビでやっていたのだから」と、つぶやきながら診察室から出て行かれる後ろ姿を目で追いながら私は「あっこりゃだめだ、テレビ教の教祖様に洗脳されている」と感じていました。
質問に対して真正面から答えていませんが、真剣に対応するだけ結果が悪い方向に行くことに気がついたからなのです。

健康情報が様々なところで取り上げられて病気や健康に関心が増えることは医師としてうれしいことなのですが、その情報の扱われ方や受け取り方が結果的に患者さんにとって悪影響を及ぼしていることが少なくないことは、医師同士での会話でもしばしば話題になります。
患者さんの気持ちをどう受け止め、どのように対応するかの一つの方法が冒頭のお話になるわけです。

健康になりたい、少しでも元気になりたいなどという気持ちから、さまざまな健康不安情報に接するたびに簡単そうな解決策に飛びつくことを繰り返していませんか?
やっぱり体を診ている主治医とよく相談してきちんとした対応を心がけてください。
病気になる前の基本は「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、さいごにクスリ」です。
特定の健康情報に惑わされたり、固執することなく、笑いながら楽しく過ごしましょう。


「いわみ談話室」から

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