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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第284段:「携帯電話」改め「ケータイ」  

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医療機関の中での携帯電話の取り扱いは厳禁と考えておられる方も少なくないと思いますが、最近は使用制限もかなり緩めになりました。

たくさんの電子医療機器がある部屋ではチョット困りますが、通常の風邪ひき程度の診察では電源が入っていても差し支えありません。
もちろんマナーモードに切り替えていただきます。

最近の病院では基本的に入院患者さんの呼び出しはしませんので、携帯電話の禁止区域以外では自分たちの携帯電話で連絡を取ってください、というところも現れています。
病院内の電話交換の手間や病棟の様々な職種の人たちの仕事を少なくする意味でも協力していただきたいですね。

ところで受診される方の大半がお持ちの携帯電話、高齢者の方は家族からの一方的な呼び出しに応えるだけと極めて単純な利用法ですが、ある程度使える方にはもっと上手に使いましょうとお願いしています。

「昨日の夜には大きな蕁麻疹が出ていたけど、今は消えてしまいました」とか「毎晩のように夜中に変な咳が出るのだけど、日中は咳が出ないのです」などといわれるのなら「それを携帯電話のカメラ機能で撮影してきてくださいませんか?」あるいは「その咳の音を録音できるでしょ」とお願いしています。

小児科領域では下痢のときの便をオムツにくるんでくると自宅から医療機関までの移動の時間中に水分がすっかり紙おむつの中に吸収されて、下痢したときとは似ても似つかぬ状態に変化しています。

特に昨今のノロウイルスなどは便を持ち歩くことで感染源になりますので、できれば写真だけで二次感染の原因になるオムツを持ち歩くことはしてほしくありません。

重症の患者さんは医療機関の中でもどうせ下痢されますからわざわざ持ってこなくても大丈夫。
続けて下痢しなければ軽症の証拠ですから他人に移る病原体を持ち運ばれない方が安全です。

下痢や蕁麻疹のみならず、かく痰、血痰、血尿、血便、嘔吐の吐物、発疹、湿疹、などの病変部だけでなく、使用している薬やサプリメント、健康食品などのビンや容器も大いに役立ちます、メモするのは意外と面倒ですよね。

転んだ場所、受傷したときに使用していた機械や器具なども自分にはわかっていても他人に説明するのは難しいものです。現場の写真や怪我の元になった道具などは、写真さえあれば「百聞は一見に如かず」なのです。

音や声の録音もケータイはできますから、咳や呼吸音、泣き声やいびきなども録音可能ですね。
動画も記録できますので、歩き方とか気にかかる動きの記録もできますね。
それぞれ工夫して診察室でお見せくださると助かります。

「最近のケータイは電話もできるのですねえ」などと携帯電話を情報端末としてではなく、遊びの道具として使っている人たちに皮肉を言っている自分も、漢字がわからなければケータイを辞書代わりに使い、ニュースの配信を受け取ったり簡単なメールを交わしたり、買い物や交通機関での利用もケータイを利用する場が増えてきました。

10年程前に携帯電話が普及し始めた頃には様々なトラブルが出現して社会問題になりましたが、いまや完全に市民権を獲得して「携帯電話」としてではなく「ケータイ」として使われています。

医療の世界でも「携帯電話からケータイ」というように気軽に使えるようになった技術や機械は少なくありません。
手軽に使っていても大切な患者さんの命です。
技術や機能だけでは命の問題は解決しません。
昔からの医師と患者の信頼関係の構築の方がはるかに大切なのですが。

『カルテの落書き』から

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