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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第285段:「意外な事実に遭遇する」  

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「夜中の2時3時頃に女性が店で酒を飲んで、初めて出会った男性の誘いに乗って付いて行き、強姦された。強姦された女性の心の傷はとても言葉では言い表せないほどの深いものです。そして、その心の傷と共に今後の人生を歩んでいかなければなりません。大変辛い状況になってしまった訳です。しかし、改めて考えてみると、酒を飲んで判断力が落ちていることを忘れ、そんな状況で初めて会った男性とに身を任せ、なぜその後のことも考えずに行動したのかということが不思議でなりません。『君子危うきに近寄らず』という言葉を知っていますか・・・」と高校生の性の指導の講演の準備をしていて、このことわざの出典を調べておこうと辞書を開いてみました。

不勉強な私は驚きました。
このことわざ中国から来たものではなさそうです。
似たような表現は認められても、これが出典という文書は中国にはなさそうなのです。

ついでに確認のため『沈黙は金、雄弁は銀』も調べてみました。

実はこの言葉、銀本位制度の1800年代の中ごろにドイツで成立したことわざのようで、当時は銀のほうに価値があり、きちんと話をして「自分の意見を主張することが大切で、黙っているだけでは何もわからないので価値がない」というのがドイツでの本来の意味だったようです。

イギリスを経由して日本に伝わり、その時期に世界が銀本位制度から金本位制度に代わり、「喋らないことに価値があり、べらべらと喋るのは劣ること」だという日本風の解釈になってしまったようです。

私はこのことわざの変遷を説明しながら高校生にドイツでの元々の解釈を今後の生活の中に生かして、どのようにお互いのコミュニケーションを構築して行動すべきかを話そうと考えていたのでした。

日本と欧米の同年代の青少年の性行動を比較してみると、日本の方がはるかに落ち着いた行動をとっているが、性感染症や避妊については満足できる状況ではないこと。
日本の10代の女性の妊娠率は欧米各国に比較すると低いけれども、中絶率は高めで妊娠させた側の男性の行動を含めて問題点が少なくないこと。
日本の社会の特有の事情などを海外の状況と比較して自ら考え行動するように話をしました。

講演後の数日後に生徒の感想が学校から私のところ届きました。
私の意図したことが良く理解されており、ほっと一安心したところです。

高校1年生は入学して半年ほど経過した頃にあたりますが、島根県でも1割程度の高校1年生にセックスの経験があることを示した上で話をはじめました。
もちろんセックスの禁止も奨励もしません。
自分たちの高校生活の中でどのような行動がふさわしいかを考えてもらいました。

2年生にも同様に状況(性交経験2割程度)を説明し前年の話に少し新たな話を追加しました。

半年足らずで県外に出て行く生徒が多い高校3年生への話しの中では、世界遺産に登録された石見銀山が銀本位制度時代の遺構であり、「雄弁は銀・・・」のことわざの本来の意味とそれに沿った行動の重要性と郷土の誇りなどを重ね話をしてみました。

知っているようで実は知らない、ことわざも性に関する状況も調べてみると意外な事実に遭遇します。

『いわみ談話室』から

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