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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第310段:見直そう『わが家の味』  

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糖尿病の患者さんやご家族と松本医院の職員とが一緒に調理実習を終え、みんなで食事を開始しました。私も午前中の診療を終えて会場に顔を出して遅れて食事に参加しました。

その日の献立は、花ちらし寿司、鰆(さわら)のホイル焼き、小松菜と切干大根の辛子和え、うしお汁、果物はイチゴが38gとオレンジが30g、果物と合わせて昼食は合計428キロカロリーです。

「いただきます」と手を合わせ、私は食直前の薬を飲んで食べ始めました。

甘みの少ない昔懐かしいおすしの味です。
調理をされた皆さんと食べ物談議をしながらの食事です。
いつもの食事よりも味が薄いと感じる人が多いようです。

「おいしく作ろうとするとついつい味を濃くしてしまうから。砂糖も塩も多めにしてしまうのですよね」と感想が出てきます。

診察室で「若い女性に寿司めしを作るときの合わせ酢には、お砂糖と酢と塩が入っているので、寿司を食べているときにはご飯にお砂糖をかけていると考えた方がいいですよ」と話をすると「えっ?砂糖が使われているのですか?いつも寿司酢を買って混ぜていますから、お砂糖が入っているという認識はありません」などと答えが返ってきます。

そんな話を紹介しながら出席された方々のご家庭の味を探ってみました。

「卵焼きを作るときに卵にお砂糖を入れますか?」と聞いてみると何人からか当然という顔で手が上がります。その一方で、えっ砂糖を入れているの?という顔も見えます。

時には味噌汁に隠し味でお砂糖が入っているご家庭があったり、酢のものを作るときの
砂糖の量も半端ではないことが分かります。

みそあえにも砂糖が使われていますし、お煮しめにも砂糖やみりんは使われています。そして、その砂糖の使用量がだんだん増えているとどなたもが感じていることが分かりました。

薄い味が素材の味を楽しむのによいと知ってはいても、食べる時には濃厚な味の方が結果的には多くの人に喜ばれているのです。

砂糖の話題だけでなく油の使いすぎにも話は広がりました。
マヨネーズも過去の調理実習できちんと作ってみて、マヨネーズの約半分がサラダオイルで構成されていることを改めて知って使用を控えた方が少なくありませんでした。

サラダに使うドレッシングにも砂糖が意外なほど使われていることや焼き肉のたれの中にも多くの砂糖が含まれていることなども再確認してその日の食事の話は一段落しました。

卵焼き、あえ物、酢の物などは各家庭で調理を担当する母から娘への直伝ですから、家庭の味を教える側にも教わる側にもおいしく作ることと、家族の健康を維持することの両面から味付けを考えなければなりません。

外食や中食といわれる時代に濃い目に調整されている食べ物を標準の味と感じる世代が増えているようです。

健康の基礎はやはり食事ですからもう一度「わが家の味」を考え直してみる必要がありそうです。


『いわみ談話室』より

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