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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第21段:患者さんの熱意  

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喘息やアトピー性皮膚炎、糖尿病や高血圧などの病気を慢性疾患と呼びます。
安定期には自覚症状に乏しく「本当に薬を使用しないといけないのかな?」としばしば疑問に思える病気のグループです。
(漢方治療の概念では雑病という概念で熱のでない慢性の病気として扱われます。)

慢性疾患の患者さんの通院態度の特徴は「薬がなくなったから、薬をもらいに行こう」です。
「薬さえ飲んでいれば大丈夫、別に今日診察してもらわなくても、この次にしよう」と考えている「あなたっ!」
「どこに行くの?」「薬を取りに病院へ」という会話は変ですよ。
病院や診療所は薬屋ではありません。診察を受け治療上薬を必要とするので、それを受け取っているのです。

診察を受けに行くのですよ! 薬をもらうために行くのじゃないですよ。

さて患者さんの熱意ですが、あなたは自分がいつまで薬を飲む必要があるのか医師や薬剤師に直接聞いたことがありますか?治療の終点がどこか認識していますか?

高血圧の薬などは「死ぬまで飲むのでしょう?」と答える方がほとんどですが、
私はそうは答えません。

診察を受ける日も「薬がなくなってから受診」という考えの方がほとんどです。
私は薬を飲み終わる予定の日に受診していただきたい。
飲み忘れの薬を持参して下さい。
診察の時に何回飲むのを忘れたかをチェックして、なぜ忘れたのかを一緒に考えましょう。

慢性疾患の薬は服薬率80%が目標です。
1日1回の薬を30日間で24回飲んでいれば80%です。
1日3回の薬なら14日間で42回薬を飲みますから33.6回が80%ですから、34回飲んで初めて80%を達成したことになります。

たとえば気管支喘息の患者さんの場合80%以上の服薬率の場合とそれ以下の場合を比較すると明らかに喘息発作の回数が増加します。
つまり10回の薬の内8回以上を飲んだ人は100%飲んでいる人とあまり発作の回数に差がないが、8回未満の服薬の人は明らかに喘息発作の回数が増加しているのです。(松本医院での調査結果)

人間だから忘れることはあります。
でも1回忘れたらすべてがダメではないですよ。
でも何回も忘れてよいわけではありません。
そのあたりの微妙なところを知って下さい。
つまらないような話のように見えますが、ここが勘所でここに患者さんの熱意を感じてしまうのです。
つまり「薬がなくなってから受診」という態度は受け身で積極的に自分の体を調節しようという熱意が感じられませんが、「薬を飲み終える予定の日の受診」には積極性があるのです。
病気と闘うという姿勢は大げさで大嫌いですが、自分の体調を整えるため熱意と感じる訳です。

何年か前に80%飲んでいればほぼ大丈夫と話したら、最初の14日間を100%薬を使用して、その後3日間、薬を全く使用しないで喘息発作を起こして来院された方がありました。
「80%飲んでいれば大丈夫といわれましたが、嘘ですね!」すごい剣幕でした。
返す言葉がありませんでした。

今になって「歩くときには右側と言われたら、綱渡りをするときも、綱の右側で渡れよな!」と言ってやればよかったなと思います。

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