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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第45段:モルヒネという麻薬の使用  

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エンドルフィンの話に出てきたモルヒネという麻薬は日本での使用量が非常に少ないといわれています。
ガンの痛みの治療には欠かせないものですが、偏見があるのかあまりつかわれていないようです。私の診療の中でも必要なときには積極的に使用しているつもりですが、現在使用中の患者さんはいらっしゃいません。

国際麻薬統制委員会(INCB)の麻薬の使用に関する報告によれば主要国の麻薬の消費量は(1日あたりモルヒネ使用量g/100万人という単位ですが単に数字の比較で見てください。1995年の集計です。)イギリスが84.7、オーストラリアが83.0、カナダが77.9、アメリカが51.6、フランスが32.3、ドイツが18.8、日本が8.3、ロシアが2.9、イタリアが1.6です。

WHO(世界保健機構)の薬物依存に関する専門委員会は麻薬等の医療以外使用の防止策を求める一方で、医療上の必要性を認める患者さんへの積極的な使用を勧告しています。

1993年の薬物依存に関する専門委員会の報告書には「麻薬の使用に関するINCB報告では、いくつかの区にでは、麻薬の医療上の適正使用の推進がはかられているが、麻薬の適正量を投与することに医療関係者が積極的でないため、患者が本来取り除かれるべき疼痛に苦しめられている国が未だに多数ある」と記載されています。

日本の使用量はイギリスやオーストラリアの10%以下ですからまだまだ使用量が少ないのです。

「ガンで死にたくない」とおっしゃられる患者さんが多いのですが、その理由のほとんどが「苦しむ」、「痛い」というような理由を話されます。

モルヒネを積極的に使用することでかなり改善されることを覚えていてください。

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