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心にうつりゆくそぞろごと
「心にうつりゆくそぞろごとを、そこはかとなく書きまぎらわしたるもの」を紹介しようと思い立ちました。
徒然草のごとく「日くらし硯に向かう」ほど暇ではありませんが、「心にうつりゆくよしなしごと」よいうか「そぞろごと」は、いくつも現れてきます。医学書を作るよりもこの方が人間味のある文になるのではないかと思います。
しばらくは「私の心にうつりゆくそぞろごと」とおつき合い下さい・・・

  第61段:傷は乾燥させないほうがよく治る  

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今年もたくさんの「とびひ」の患者さんを診察させていただきました。
「とびひ」になった部分を乾かして治そうとしている方が大半です。
私はそうは思いません。

「とびひ」の病原菌は表皮ブドウ球菌が多いのですが、細菌は病変が乾燥してくると細菌自体の繁殖がしにくくなるために細菌の周囲にバイオフィルムというバリアを作り抗生物質が効きにくくなるようにして細菌の生存を確保します。

ですからむしろ細菌の繁殖しやすいジクジク状態にして細菌を無防備な状態にしておいて抗生物質を使うほうが効果的なようです。

抗生物質の飲み薬と消毒そして皮膚に軟膏を使用します。
ガーゼで覆ったりしないでおく方がよいようです。
(「とびひ」にたいする考え方や治療法は医師によって大きく異なる場合がありますので私の説を鵜呑みにしないで下さい。)

傷のもう一つの代表選手に、寝たきりの方の褥創(ジョクソウ)があります。
「とこずれ」とも言いますが、以前は治療はもっぱら乾燥させて治癒を待つことでした。
現在は大違い!「とこずれ」はジクジク湿潤化させ感染を防止して肉芽が早く盛り上がってくるように処置します。
乾燥化させると治る時期が遅れます。
皮膚や皮下組織の部分はしっとりとして感染がなく栄養豊富なときのほうが治りやすいのです。
乾燥化すると治るのが遅くなるばかりですから方針を転換したわけです。
昭和の時代ならいざ知らず、平成の時代は傷は感染がなく乾燥させないようにする事だということを理解していただきたいのです。

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