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1997年6月の米国糖尿病学会で糖尿病の新しい診断基準が発表されました。
日本では今年の6月頃に新しい診断基準を発表する予定です。
昔は甘い砂糖水の様な液体を飲んで30分おきに何度か採血をされた方があるかもしれませんが、糖分の摂取を制限した方がよい人に糖分を食べさせる(飲ませる)のは病気を悪くさせる可能性があるので「日常診療では推奨しない」となっています。
そして今回の改訂で今まで空腹時血糖(食後8時間以上カロリー摂取がない状態での血液中のブド ウ糖量)を測定し140mg/dl以上を糖尿病と診断していたのを、126mg/dl以上を糖尿病と診断することになるようです。
これは糖尿病の進行状態を詳しく検討した結果、今までの診断基準では病気の進行を止めることが困難で、糖尿病によって引き起こされる様々な病気をくい止めるためには126mg/dlと いう値が適切であるという結論に落ち着いたためです。
今まで「軽い糖尿の傾向ですから気を付けて下さい」と言われていた人が「糖尿病です。食事療法と運動療法を始めましょう。」といわれます。
今回の改訂では空腹時血糖の正常は110mg/dl未満ということになりました。
110mg/dl以上〜126mg/dl未満の人は空腹時血糖の境界域となります。
今までよりも糖尿病と判定される方が増えます。
私たちもこれまで以上に糖尿病診療に力を入れて行きます。
自覚症状がないから大丈夫ではありません。
糖尿病の治療は症状を自覚させるようでは失敗なのです。
もう一度自分の健康状態を点検しましょう。
糖尿病の軽い人には以外と心臓病の発生が多いことも分かっています。
10年前に比べて糖尿病の薬は格段に進歩しました。
昔の知識や常識は全く覆されているといっても良いかもしれません。
もう一度ご相談下さい。
2.厚生省が「糖尿病実態調査」の概要を発表
厚生省から3月18日、平成9年11月に実施した「糖尿病実態調査」の概要 (速報分) が発表されました。以下は、その抜粋です。
調査対象は、20歳以上の人 5.,883人で、男性 2,335人、女性 3,548人、年代別では、20代が 649人、30代 842人、 40代 1,117人、50代 1,212人、60代 1,171人、70代 892人です。
なお、今回の概要は速報分で、確報は 10年度中にまとまるとのことです。
●糖尿病が強く疑われる人 (HbA1cが 6.1% 以上) は、全国で 690万人と推定される。
糖尿病の可能性を否定できない人 (HbA1c 5.6 〜6.0%) を合わせると 1,370万人と推定される。
●糖尿病が強く疑われる人の 28.0%、糖尿病の可能性を否定できない人の 26.9% が、現在肥満 (BMI 26.4 以上) である。
●糖尿病が強く疑われる人の 52.7%、糖尿病の可能性を否定できない人の 37.3% が、過去に肥満だったことがある。
●糖尿病が強く疑われる人のうち、健診を受けたことのある人の半数以上 (51.8%) は治療に結びついている (治療を受けている) が、健診を受けたことがない人の 93.1% は治療を受けていない。なお、今回の調査で健診を受けたことのある人の割合は 66.7% だった。
●糖尿病が強く疑われる人のうち、現在糖尿病の治療を受けている人は 45.0%。残りの 55.0%は治療を受けておらず、その状況は、「健診で異常値を指摘されたが医療機関を受診しなかった」が 1.2%、「健診で異常値を指摘され医療機関を受診したが、医療機関か らは異常を指摘されなかった」1.7%、「治療を中断」7.1%、「健診で異常値を指摘され、医療機関からも異常を指摘されたが治療を受け ていない」9.1%、「健診を受けず」13.9%、「健診で異常なし」22.0% となっている。
●糖尿病で現在治療を受けている人 (217人) のうち、合併症が発症している割合は、 神経障害が 20.3%、網膜症 16.1%、腎症 14.3%、足の壊疽 0.5%。
●今回の調査で異常値が示されているが、現在治療を受けていない人 (140人) のうち、合併症が発症している割合は、 神経障害が 5.0%、網膜症 4.3%、腎症 10.7%、足の壊疽 0.7%。
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