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昨年12月から日本で健康保険で使えるようになった気管支喘息の新しい薬が2種類あります。約6ヶ月間使用してその感想を紹介します。
1つは副腎皮質ホルモン(ステロイド)の吸入薬です。
フルタイドという薬でこれまでの吸入薬の副腎皮質ホルモンと異なり微細な粉薬を簡単な器具を使って吸入します。気管支喘息発作の回数が劇的に減り、多くの気管支喘息の患者さんが発作から縁遠い生活となりました。風邪を引く回数も激減しており驚異的な薬です。
しかも副作用がほとんどなく(副腎皮質ホルモン・ステロイドが毒だ!と騒いでいる人はこの現実を見てほしい。すばらしい効果です。)アレルギー科を標榜しておられ診療でこのフルタイドを使用されている複数の医師も絶賛しています。
ところが余りに効果が良いために薬を使うのを忘れ再び発作を起こしてしまう方も時にはあるようですが。(それはステロイドのためではなく、薬の使用を忘れたことによる発作です。この状態がステロイドに依存している状態と判断される方は「依存症」という言葉の定義を勉強してから反論してください。)
今まで使っていた吸入薬に比べ格段の差があるように思えます。
健康保険の規則で1回に1週間分だけしか処方できません。
コントロールが良くなった患者さんに毎週薬を取りに来てくださいなどというのは変ですよね。規則の変更が待たれます。(発売開始から2年を経過して安全だと確認されると2週間分が処方できるようになります。)
2つ目はホクナリンテープという貼り薬です。
むしろシールといっても良いくらいの大きさの気管支拡張剤を含んだテープです。大人用の2ミリグラム、子供用の1ミリグラム、0.5ミリグラムの3種類が発売になりました。この系統の気管支拡張剤は手が震えたり、胸がドキドキするなどの副作用がありましたが、貼り薬にすることでそれらの副作用をかなり減らすことに成功しました。
この薬の特徴は1回貼ると24時間テープを張りつづけ(入浴の前後で古いものをはがし新しいのを貼る)るため効果が24時間持続するという点です。
喘息発作は夜明け前に体の中で作られる副腎皮質ホルモンが一番少ないとき起こりやすいのですが、この時間帯には薬が十分に効いているため発作が起こりにくくなること、そのために安眠できる(子供の明け方の発作で親が起きなくても良くなるなどの点で大変喜ばれています。)ことなどで患者さんの生活がかなり楽になるようです。
フルタイドと同様に他の医師とも感想を交換しましたが、フルタイドと同じく高い評価でした。小児に使用するときには背骨のラインに沿って貼るのが良いようです。筋肉がついていないところなので窪みになっており、洋服とこすれ合いにくいのではがれにくい、背中なのでかゆがってかきむしってしまう可能性が少ない。(時にテープの粘着剤でかゆみを感じたり軽い皮膚炎を起こす方もありますが、効果の良さで現在まで使用をいやがられた方はありません。)
薬の説明書には胸、背中、上腕とかいてありますが、大人は理解ができても、小児の場合理解が不充分ですし、寝ていて掻く可能性がありますのでは背中の背すじに沿って上下に貼る位置を替えるのが良いでしょう。
この2種類の薬のおかげで気管支喘息の治療がかなり取り組みやすくなりました。
しかし、喘息そのものが完全に治るようになったわけではありません。
現在も気管支喘息が一瞬にして死を招く可能性がある病気であることには変わりありません。
いくらかコントロールがしやすくなっただけです。
誤解のないようにお願いします。
医師と良く相談し正しく喘息を理解して良い状態を保つようにして下さい。やがて治癒に繋がります。
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